エアシリンダの選び方で失敗しない!押さえておきたいポイントまとめ
エアシリンダは、自動機械などでよく使用される機器ですが、種類が多く、適用範囲も広いため、どのようなエアシリンダを選べばいいのか、迷われる方も多いのではないでしょうか。
エアシリンダは様々な用途に使用される重要な空気圧機器であり、正しい選定が必要です。本記事を読むことで、エアシリンダの選び方について理解を深め、失敗しない選び方ができるようになりますのでぜひ参考にしてください。
エアシリンダとは
エアシリンダとは、圧縮空気の力を使って、ピストンを動かし、動力を与える機械部品のことです。圧縮空気をエアシリンダ内に送り込むことによって、シリンダー内のピストンが押し出される仕組みです。
このように、エアシリンダは、圧縮空気を動力として、ピストンを動かすことで直線運動を起こす空気圧機器です。機械や装置において、加工物の移動や挿入、ピックアップ、精密な位置決めや動作、高速移動、高精度の力の加減、極低温環境下での動作など、様々な役割を果たすために使用されます。
自動車、半導体、食品、医療、農業機械、建築機械などの多岐にわたる分野でよく使用される機器であり、その使用範囲は広く機能も多彩です。多様な場面で使用される反面、エアシリンダの種類も非常に多く存在します。その中で適切なエアシリンダを選ぶことが、機械の性能向上や、作業効率の向上につながるのです。
エアシリンダの種類
エアシリンダの種類には、用途や形状によって様々なものがあります。例えば、一般形のエアシリンダ、省スペース型シリンダ、ガイド付きシリンダ、ロッドレスシリンダなどが挙げられます。
それぞれの種類によって特徴が異なり、用途に応じて適切な種類を選ぶ必要があります。ここでは、代表的なエアシリンダの種類について説明します。
一般形
一般形のエアシリンダは、ボディが丸い筒状の形状をしており、最も一般的とされている形状です。また、形状の単純さから製造コストが抑えられ、多くの用途で利用されています。
コンパクト形
コンパクト形のエアシリンダは、一般形に比べてストローク方向の寸法が短く、コンパクトで軽量なため、狭いスペースでも使用することができます。ボディにシリンダセンサ取付用の溝が設けられているので、組付時の作業も容易になります。人気のある形状で生産量も多いためコストも比較的安価です。
ガイド付き形
ガイド付き形は、ピストンがガイド部に沿って正確に直線運動をするように設計されたエアシリンダです。ガイドが付いているため、ピストンが左右に揺れることなく、直線的に動くことができます。そのため、高精度な位置決めや作業が必要な場合やピストンロッドに横荷重がかかるケースなどに使用されます。ただし、ガイドが付いていることから一般形に比べて構造が複雑であり、メンテナンスが困難な場合もあります。
デュアルロッド形
デュアルロッド形エアシリンダは、ピストンロッドが2本内蔵されている形状です。2本横並びに設置されているため、高さ寸法を抑えた上で通常の2倍の推力を出すことができます。また2本のロッド先端がプレートで連結されているため簡易的なガイド機構にもなっており、それなりの横荷重を受けることもできるシリンダです。
ブレーキ付き形
ブレーキ付き形は、一般形のエアシリンダに加え、ピストンを中間で停止させることができるようにブレーキ機構が追加されたものです。ストロークの中間位置で停止できるため、位置決め機能が必要な場合に使用されます。また、ブレーキ付き形は、停電などの異常事態が発生した場合でも、ピストンを中間停止させることができるため、安全性の高い機器としても利用されています。
ロッドレス形
ロッドレスエアシリンダは、名前の通りロッド(シリンダーの外に突き出した棒状の部品)がない構造のシリンダで、ロッドの代わりに本体側面部のスライダテーブルがストローク動作します。ロッドがない分、全長が短くなり省スペース化に貢献します。また、数メートルのロングストロークに対応できるという特徴もあります。ワークの搬送用途や全長寸法を抑えたい場面に向いています。
エアシリンダを選ぶ際のポイント
エアシリンダを選ぶ際のポイントとしては、使用用途や環境に適した適切な種類のエアシリンダを選ぶことが重要です。適切なエアシリンダの選択は、機械の性能向上や、作業効率の向上につながります。
具体的には、以下のポイントを考慮する必要があります。
- 必要推力
- ストローク
- 動作速度
- 使用圧力範囲
- 耐モーメント
- 取付方法
- 設置スペース
- オプション機能の必要有無
- 作業環境への適応
必要推力
エアシリンダの必要推力は、「物を運ぶ・動かす」「圧入する」といった作業に必要な力のことです。推力が不足すれば作業を満足に遂行することはできないため、エアシリンダの選定では最も重要なポイントです。作業する対象物の重量や摩擦係数、動作速度などから必要推力を計算し、適切な推力のエアシリンダを選定する必要があります。
また、必要推力を計算する際には、動作時の荷重重量だけでなく、起動や停止時の衝撃力も考慮する必要があります。衝撃力が大きい場合は、適切なクッション機構を持つエアシリンダを選定することが重要です。
ストローク
エアシリンダのストロークは、ピストンの移動量のことを指します。作業対象物の移動距離や作業範囲に応じて、適切なストロークを選ぶ必要があります。選定したストロークが長すぎた場合は、別機構でストッパを設けて調整することは可能ですが、短すぎる場合は実施したい作業が成立しなくなってしまいますので注意してください。
動作速度
エアシリンダを使用する箇所に求められる動作速度も、事前に確認しておく必要があります。エアシリンダには、機種によって最高動作速度と最低動作速度が規定されています。これは、規定された範囲外で使用すると動作不良や故障を招く可能性があるためです。
動作速度が遅い場合は、低速仕様のオプションが用意されている機種を選ぶことができます。一方、動作速度が速い場合は、高速タイプのエアシリンダを選ぶようにしましょう。いずれの場合も、カタログ値を確認して、規定された動作速度の範囲内に収まるように注意してください。
使用圧力範囲
エアシリンダは機種によって使用できる圧力範囲が異なります。エアシリンダのサイズを小さくして圧力を上げ、必要推力を出そうとした場合、もしシリンダの使用圧力範囲を上回ると、故障やエア漏れによる動作不良を引き起こす可能性があります。
逆に、推力を減らすために圧力を下げた場合、もしシリンダの使用圧力範囲を下回ると、シリンダが動作しない、もしくはスムーズに動かないなどの動作不良を引き起こす可能性があります。使用可能な圧力範囲内で選定する必要がありますので、こちらもしっかりとカタログ値を確認して選定するようにしましょう。
耐モーメント
エアシリンダのロッドに横荷重がかかる場合、シリンダの許容モーメント値を超えた負荷がかかると、エア漏れや本体の変形など早期の故障につながります。そのため、許容モーメント値を超える負荷がかかる場合は、別途ガイド機構を併設して使用するか、ガイド付きのシリンダを選ぶようにしましょう。これによって、ロッドが安定した動きをするため、長期間の安定した動作が可能となります。
取付方法
エアシリンダを装置に取り付ける方法は、使用用途によって異なることがあります。そのため、多くの種類の取付方法に対応できるよう、シリンダには様々な取付方法が用意されています。シリンダのボディ本体を直接取り付けることができるタイプもありますが、フランジ、トラニオン、クレビス、ナックルなどの支持金具が用意されている機種も多く存在します。使用用途に合わせて適切な取付方法を選択することが重要です。
設置スペース
エアシリンダを使用したい箇所は必ずしも十分なスペースが確保できるわけではありません。設置箇所のスペースに入る種類のシリンダを選ぶ必要があります。ストローク方向の本体寸法が短いコンパクトシリンダ、ロッド分の寸法を短く抑えられるロッドレスシリンダ、高さ寸法を抑えられるデュアルロッドシリンダなど省スペースに役立つ機種はたくさんあります。設置スペースに見合った機種のシリンダを選ぶようにしましょう。
オプション機能の必要有無
エアシリンダには、エンドロック機構、ブレーキ機能、減速機能(エアクッション)、低速仕様、ロッド回り止め、などの様々なオプション機能があります。機種によって対応できるオプションも異なるため、作業に必要な機能がある場合は、それを満たすオプションがあるかどうかも注意して確認するようにしましょう。
作業環境への適応
エアシリンダは、様々な環境で使用されます。例えば、100℃以上の高温環境、氷点下の低温環境、粉塵が舞う環境、水がかかる環境、溶剤が付着する環境、使用部材に制限がある環境、クリーンルームなどがあります。これらの環境に対応した機種やオプションも用意されています。適切な機種を選ぶことで、故障やトラブルを未然に防ぐことができます。作業環境を十分に把握して、適切な選定を行うようにしましょう。
まとめ
以上が、エアシリンダの選び方についての解説でした。エアシリンダは、工業分野で欠かせない部品の一つであり、様々な種類が存在します。適切なエアシリンダを選ぶことは、装置の安定稼働や無駄な工数の削減につながります。
エアシリンダを選ぶ際には、必要な推力やストローク、耐モーメントなどの要素を十分に把握し、使用箇所や作業環境に適した機種やオプション機能を選定することが重要です。また、取り付け方法や設置スペースにも注意が必要です。適切なエアシリンダを選ぶことで、生産性の向上や安全性の確保につながります。
本記事を参考にしていただき、エアシリンダの選定で失敗しないように選び方をマスターしていきましょう。