真空パッドの選び方:使い方や目的に合わせた選び方のポイント
真空パッドは工場現場の多くの場面で使用されており、空気圧機器の中でも欠かせないアイテムとなっています。電動化、エアレス化が進む工場であっても真空パッドは使われるというケースもあるほどです。
本記事では真空パッドの用途、仕組み、使い方、吸着力の計算方法、形状種類と使い分け、材質と使い分けについて解説し、真空パッドへの理解を深められるようにしていきます。
真空パッドの用途
真空パッドは、ワークを吸着保持したり移動させたりするために使用されるパーツです。 物流・自動化システム、電子部品の製造工程、食品製造ライン、医療機器など、様々な産業分野で活用されています。
具体的な用途としては、ICチップ製造ラインでのワークのハンドリング、自動組立ラインでの工具・治具の取り付けや、ビニールフィルムなどのシート状物質の吸着などが挙げられます。また、ロボットアームの先端に装着することで、多彩なワークのハンドリングにも役立っています。
真空パッドの仕組み・使い方
一般的な真空パッドは、中央に穴が開いた円盤状のゴム製のパッドが先端についた機器です。真空パッドの真空ポートと真空発生器(真空ポンプやエジェクタ)をエアチューブでつなぎ、真空発生器から真空引きすることでパッド内に真空状態を作り出します。
そしてパッド部をワークに接触させると、真空パッド内外に圧力差が生じるため、ワークを吸引する力が働き保持することができます。
このように真空パッドは、内側を真空状態として生じる外部との圧力差を利用してワークを保持する仕組みとなっています。
真空パッドの吸着力の計算方法
真空パッドの吸着力は、以下の式で計算することができます。
W = C × P101 × 10.13 × f
W 吸着力(N)
C パッド面積(cm2)
P 真空圧力(-kPa)
f 安全率
【安全率参考値】
水平吊り上げ 1/4
垂直吊り上げ 1/8
吸着面積は真空パッドがワークに接触する面積です。真空圧力は、エジェクタや真空ポンプによって作り出される真空圧力で、PaやkPaなどで表されます。安全率はメーカーによっても考え方が異なりますが、国内主要メーカーでは、水平吊り上げ時は1/4、垂直吊り上げ時は1/8と規定されています。
真空パッドの形状種類と使い分け
真空パッドはあらゆるワークに対応するため、様々な形状のラインナップが存在します。以下に、代表的な真空パッドの形状と使い分けについて説明します。
一般形・平形
スタンダードな形状の真空パッド。厚くて形状変化の少なく、吸着面が平らなワークであれば一般形の真空パッドが使用されます。サイズバリエーションが多く幅広い用途で使用されています。
深形
深形タイプの真空パッドは、一般的な平面形状のパッドよりも深い形状を持ち、丸いボールなど球体形状のワークに適しています。深い形状だと球体ワーク表面にパッドがしっかりと接触し、高い吸着力を発揮できます。
スポンジタイプ
スポンジタイプの真空パッドは、柔らかく弾性のあるスポンジ素材を使用しており、表面が凸凹したワークの吸着に適しています。ワークとの接触面が柔らかいため、ワークに傷をつけにくいのも特長です。
ベローズタイプ
ベローズタイプの真空パッドは柔軟性があり、押し付けたり引っ張ったりすることで伸縮する構造になっています。不均一な形状や曲面、形状が変化するワークなど、平面以外の部分にもしっかりと吸着できるため、多様な形状のワークに使用されます。特にレトルトパックなど食品が入った袋などの吸着搬送で重宝されています。
フラットタイプ
フラットタイプの真空パッドはその名の通り吸着面が平らな形状をしています。フィルム材など薄物ワークを吸着する場合、一般的な形状のパッドだと真空で吸い込むことでワークにシワができてしまいますが、フラットタイプは吸着面が平らなためシワを軽減させることが可能です。
吸着痕防止タイプ
吸着痕防止タイプの真空パッドは、通常の真空パッドと違い、パッド部が樹脂材質となっており、ワーク表面に残る吸着痕を最小限に抑える工夫が施されています。液晶ガラスなど吸着痕を付けたくないワークに使用されます。
真空パッドの材質と使い分け
真空パッドは材質も多様に選択肢があり、それぞれ特性が異なります。以下に真空パッドの主な材質とその特徴、使い分けについて説明します。
ニトリルゴム
ニトリルゴムは、一般的なゴム材料であり、真空パッドにおいても広く使用されています。ニトリルゴムは、油に対して耐性があり、摩耗性も良く、比較的低価格で入手できます。ただし、耐熱性や耐薬品性に欠けるため、高温や化学薬品に接触する場合には使用できません。
シリコンゴム
シリコンゴムは、高温に耐えることができ、耐久性にも優れています。また、非常に柔軟性が高く、表面が平滑である場合に最適な素材です。ただし、比較的高価であり、油にも弱いため、使用箇所には注意が必要です。
ウレタンゴム
ウレタンゴムは、柔軟性が高く、耐久性に優れ、抗摩耗性にも優れています。また、低温でも柔軟性を維持するため、氷点下環境での使用でも能力を発揮することができます。ただし、耐熱性には欠け、高温下では変形する可能性があります。
フッ素ゴム
フッ素ゴムは、化学薬品や溶剤に対して耐性があり、高温下でも使用できます。また、摩耗性が低く耐久性もあります。ただし、比較的高価であり、柔軟性が低いため、表面が凸凹している場合には使用しづらい材質です。
EPDM
EPDMは、耐熱性、耐候性、耐薬品性に優れたゴム材料であり、真空パッドにおいても使用されます。また、低温環境にも強い特徴もあります。ただし、EPDMは比較的柔軟性が低い、摩耗性が高い、油に弱いなどデメリットもあります。
まとめ
以上、本記事では真空パッドについて説明しました。真空パッドは真空圧を利用してワークを吸着保持するための機器であり、様々な産業分野で活躍しています。選定する場面も多々あると思いますので、特徴や選定計算方法、バリエーションごとの使い分けなどを把握しておくようにしましょう。