真空エジェクタとは?原理・仕組みと真空ポンプとの用途の違いを解説
自動機械で欠かせない真空エア。真空エジェクタは真空エアを発生させるための機器。しかしどのようにして真空エアを発生させているのか気になるところです。
また、真空エアを発生させるのは真空エジェクタだけではありません。真空ポンプも真空エアを発生させることができるのですが、真空エジェクタとどのように違い、どのように使い分けされるのでしょうか。
本記事では真空エジェクタの真空を発生させる原理・仕組みと、真空ポンプとの違いや使い分けについて解説していきます。
真空エジェクタの原理・仕組み
真空エジェクタは「流体(この場合はエア)の流速が上がると圧力が低下する性質」(ベルヌーイの定理)を利用して真空エアを発生させる機器です。
真空エジェクタの内部構造は下図のようになっています。
INポートから圧縮エアを流すとノズルからディフューザーを通って大気に排気されます。圧縮エアはノズルで一旦絞られた後、ディフューザーで効率よく大気へを放出されることとなります。この構造により、供給した圧縮エアはノズルを通った後に流速が急上昇します。
すると冒頭で説明した「流速が上がると圧力が低下する性質」により真空エジェクタ内の圧力が低下し真空状態となり、真空ポートからディフューザーへのエア流れが発生します。
真空エジェクタは、このように圧縮空気の流速を上昇させる内部構造によって真空エアを発生させているのです。
真空エジェクタの用途
真空エアは自動化された設備において多々使用されています。主にワークの吸着用途に使用されることが多いですが、集塵用途などに使用されることもあります。
ワークの吸着用途
配管内を真空状態にし先端のパッドをワークに押し当てると、大気との圧力差によりワークを吸い寄せる力が働きます。この力によりワークを吸着して搬送することが可能になります。
エアチャックでは掴める箇所がないワークであったり、強い力ではワークが破損してしまったり傷ついてしまうようなケースでは、このような真空による吸着把持が好まれます。
集塵用途
例えば半導体や電子部品の製造工程、食品製造ラインなど「ホコリや塵の付着が好まれない環境」で、クリーンな環境を確保するために真空エアが利用されます。空気は圧力が高いところから低いところへ流れる性質があるため、エジェクタを使用すると大気からエジェクタの真空ポートへの空気の流れが発生し、大気中の埃や塵を吸引することができます。
空気清浄機を部屋を使用するのとイメージや同じです。ただし、エジェクタでは真空流量が限られるので「一部だけ局所的にクリーン環境にしたい」といったケースに向いています。
真空エジェクタと真空ポンプの比較・使い分け
真空ポンプも真空エジェクタと同じように真空エアを発生させるためのものです。
真空エジェクタと真空ポンプの比較を次の表にまとめました。
真空エジェクタ | 真空ポンプ | |
---|---|---|
駆動源 | 圧縮エア | 電気 |
省スペース | ○ | △ |
真空流量 | △ | ○ |
イニシャルコスト | ○ | △ |
ランニングコスト | △ | ○ |
タクトタイム | △ | ○ |
真空エアの使用量が少ない場合は真空エジェクタ
真空エジェクタはシンプルな構造であるためサイズは小さく、価格も安く抑えられます。対して真空ポンプはイニシャルコストが比較的高く、真空エアを小流量しか使用しない場合ではもったいない出費となってしまいます。小流量の真空エアで良いなら真空エジェクタが向いていると言えます。
真空エアの使用量が多い場合は真空ポンプ
真空エジェクタは小型・低コストである反面、真空エアの発生効率は悪く大量の圧縮エアを消費するため、コンプレッサの稼働率は上昇し電力消費も大きくなります。大量にエジェクタを使用すると圧縮エアが不足し、コンプレッサをサイズUPすることになり結果としてイニシャルコストも高くなる可能性もあります。
対して真空ポンプはイニシャルコストは比較的高いものの、真空エアの発生効率は良いため、多くの真空エアを使用する場合はランニングコストも抑えられます。大流量の真空エアが必要な場合には真空ポンプが向いています。
タクトが早い場合は真空ポンプ
ワークの吸着搬送工程でタクトタイムが1秒前後、もしくは1秒を切るような高タクトが求められる時は真空ポンプの方が向いています。真空エジェクタは、真空発生時は常に圧縮エアを消費するため、「真空エアが必要な瞬間だけ使用する」のが基本です。
そのため真空の立ち上がり時間が毎々かかることになり高タクト工程では厳しくなります。使用しっぱなしにすれば良いですが圧縮エアも消費しっぱなしになるので、それであれば真空ポンプを使用するのが適切でしょう。