精密レギュレータとは?その特徴や普通のレギュレータとの違いを解説
圧力調整をするレギュレータには、ハイスペックタイプの精密レギュレータなるものが存在します。
一体、精密レギュレータは普通のレギュレータとどのように違い、またどのような場面で活躍する製品なのでしょうか?
本記事では、精密レギュレータとはどんな製品なのか、特徴や用途例を交えて説明し、普通のレギュレータとの違いを明らかにしていきます。
通常のレギュレータの説明については以下リンクよりご確認ください。
【精密レギュレータの特長1】高精度な圧力制御ができる
精密レギュレータは普通のレギュレータよりも高い繰り返し精度を持っています。そのため繰り返し使用した際の、設定圧力の振れが少なく再現性が良いメリットがあります。
また、2次側の微々たる圧力変化にもレスポンス良く反応し、圧力を調整します。調整後の圧力変化が非常に少ないのが特徴です。
微少な圧力変化が装置の仕事に影響を与えてしまうような場面では、精密レギュレータの設置は必要になってきます。
【精密レギュレータの特長2】感度が良く微妙な圧力調整が可能
通常のレギュレータは調整ノブを少し回しただけでも圧力が大きく変化してしまい、数kPa程度の微妙な圧力調整は困難です。
対して精密レギュレータは感度が良く、低圧タイプでは約1kPa(0.001MPa)程度の微妙な圧力を調整することも可能です。
そのため、ロールtoロールのテンションコントロールやシリンダの押し圧コントロールなど、微妙な圧力調整が必要な用途では精密レギュレータの使用が適しています。
【精密レギュレータの特長3】大流量リリーフ(排気)でバランサ用途に最適
レギュレータは2次側の圧力が設定圧よりも高くなった時、エアをリリーフポートから大気に放出(リリーフ)して圧力が設定圧に戻す機能があります。
精密レギュレータはこのリリーフできる流量が通常のレギュレータよりも多いのです。そのため2次側が急激に圧力上昇しても反応良くリリーフでき、設定圧を保ちやすくなります。
この特徴はシリンダをバランサ用途で使用する際に適しています。
バランサはシリンダを垂直に使用し、上昇方向のエア圧力を調整して重量物の下降方向にかかる力とバランスをとります。すると重量物を手動でも軽い力で上下させることができるようになります。
この場合、手動で下降側に動作させる時にレギュレータの2時側の圧力は上昇し、バランスをとるためリリーフポートからエアが放出されます。
しかしリリーフポートからエア放出できる量が少ないと、バランサの下降動作は抵抗が強くなってしまいスムーズな動きができません。
そのため、バランサ用途で使用するレギュレータは大流量リリーフができる精密レギュレータの方がスムーズに動作させられるため適しているのです。
【精密レギュレータの特長4】0.003MPa〜の微圧制御も可能
通常のレギュレータの設定圧力範囲は0.05MPa〜となっており、これ以下の微圧に調整することは難しいです。
その点精密レギュレータは微圧域の細かい調整もでき、機種によっては0.003MPa〜と非常に小さい圧力の調整をすることも可能です。
そのため、シリンダで低推力の押し圧コントロールや、微圧のリークテスト機など、微圧を必要とする用途にも適しています。
精密レギュレータの原理・仕組み・構造
精密レギュレータはどのようにして圧力調整話するのでしょうか?通常のレギュレータと比較して説明していきます。
通常のレギュレータの圧力調整
通常のレギュレータの圧力調整は、エアの圧力がバネの力と釣り合うところで調整する仕組みとなっています。
バネと2次側のエアはダイヤフラムで隔てられており、調整ノブをねじ込めばバネが縮み力が強くなりダイヤフラムが押され弁が開き、圧力が上がります。エア圧力がバネ力と釣り合った時に弁が閉じ、圧力調整が完了します。
反対に調整ノブを緩めればバネ力は弱くなるため、エア圧力も低い時点で力が釣り合い調整されます。
精密レギュレータの圧力調整
対する精密レギュレータの仕組みを説明します。(精密レギュレータは各メーカーで構造が異なるため一例を紹介します。)
精密レギュレータの圧力調整はパイロットエアの圧力とメインエアの圧力が釣り合うところで調整する仕組みになっています。
パイロットエアの圧力は通常のレギュレータと同様に調整ノブにより収縮されたバネと釣り合う力に調整されます。
調整されたパイロットエア圧力と、メインエアの2次側圧力はダイヤフラムで隔てられており、パイロットエア圧力が強ければ弁が開き2次側圧力を上昇させます。
メインエア圧力が上昇しパイロットエア圧力と釣り合った時点で弁は閉じ、圧力調整が完了となります。
メインエア2次側圧力が高くなると、パイロットエアを大気に放出し圧力を下げることでダイヤフラムが押し上がり、メインエアをリリーフポートから放出して圧力を設定値まで下げます。
このように精密レギュレータはエア同士の力をバランスさせることにより精度の良い微妙な圧力調整を可能にしているのです。
使用中は常にエア漏れ?不具合ではなくブリード
精密レギュレータは使用している時、本体から常にエアが排気されています。しかしこれはエア漏れ不具合ではありません。
ブリードといって数L/min程度の微少なエアを敢えて放出しています。このブリードは精密レギュレータの高精度な圧力調整には欠かせないものです。
シューっとエア漏れ音がしますが、不具合品と誤ってメーカーにクレームを訴えないようにしましょう。
精密レギュレータの用途・使い方
精密レギュレータは特徴1〜4に記載のように高精度、高感度、大流量リリーフ、微圧制御といった機能を持っています。
精密レギュレータのこれらの特徴は次のような場面で力を発揮します。
- ロールや巻線のテンションコントロール
- シリンダの押し圧コントロール
- バランサ
- リークテスター
この他にもエアブローの脈動を抑えたり、圧力変化を嫌う場面や背圧が大きくかかる場面など、様々な用途で使われます。
SMCとCKDの精密レギュレータ型番(小型含む)
国内の主要メーカー2社(SMC、CKD)の精密レギュレータを紹介します。
SMC | CKD |
---|---|
- | RJB500 |
IR1000-A | RP1000 |
IR2000-A | - |
IR3000-A | RP2000 |
SMC、CKDともに3サイズずつラインナップされています。SMCのIRシリーズは中間サイズがあり、CKDにはRPシリーズの他、小型のRJBシリーズがあります。
この2社以外にもコガネイ、フジクラ、アズビルTACOなど多くのメーカーが取り扱っています。
まとめ〜精密レギュレータとレギュレータの違い
以上、精密レギュレータの特徴、仕組み、用途について説明しました。最後に精密レギュレータが普通のレギュレータと異なるポイントをまとめます。
- 高精度で設定圧からの圧力変化が少ない
- 感度が良く微妙な圧力調整ができる
- リリーフ流量が大きい
- 数kPa〜の微圧制御ができる
- ブリードによるエア消費がある
コストはもちろんですが構造が複雑な分、普通のレギュレータよりも高くなりますので、上記特徴を押さえ必要に応じて使い分けをするようにしましょう。