【空圧用語解説】パイロットエアとはなんのこと?
「内部パイロット」「外部パイロット」「パイロットエアを入れる」「パイロット式電磁弁」、空圧関係の機器を選定しているとパイロットというワードがよく出てきます。
当たり前のように出てくるので、今さら聞けないという方も多いのではないでしょうか?
本記事では空圧機器のパイロットエアとはなんのことを指すのかを説明していきます。
パイロットエアとはバルブを切り替える補助エアのこと
パイロットエアとは、空圧業界ではバルブを切り替えるために供給される圧縮空気のことを指します。
バルブ(電磁弁)は電気の力で切り替えられるものだけではなく、エアの力で切り替えられるものが多く存在するのです。
イメージが湧きづらい方のために、冒頭で挙げた「パイロット」の付くワードについてそれぞれ説明します。
内部パイロット
内部パイロットは、主にシリンダ駆動用の3ポート・5ポートのソレノイドバルブで使われている方式です。
ソレノイドバルブは通電することで切り替えられるため、バルブ内部の切り替えスプールは電気の力で動作すると勘違いしている方も多いです。
しかし、ソレノイド部に通電することで操るエアはごく少量で、シリンダを動かせるほどの力にはなりません。実はこの少量のエアによってバルブ内部のスプールを動作させているのです。
シリンダを駆動させるには大流量のエアが必要です。バルブを内部パイロットにすると、ソレノイドを小さくしても大流量が流せるため、消費電力、サイズ、コストを抑えられます。
外部パイロット
外部パイロットは内部パイロットと同様に、ソレノイド部を通電すると少量エアがスプールに圧をかけ、動作させる方式です。
内部パイロットとの違いは、パイロットエアの供給方法です。内部パイロットはメイン流路に流すエアをバルブ内部で分岐させ、ソレノイド部へパイロットエアを供給しています。
それに対し、外部パイロットはメイン流路とは別に配管を設けて、ソレノイド部へパイロットエアを供給しています。そのため外部パイロットはパイロットエア用ポートへの配管が追加で必要になります。
外部パイロットにすることにより、なにができるかというと、低圧エアや真空エアを使用することができるようになります。
内部パイロット式ソレノイドバルブの最低使用圧力は大体0.2MPa程度ですが、それを下回る圧力や真空ではスプールを安定して動かせず、動作不良となってしまいます。
内部パイロットの最低使用圧力より低い圧力、もしくは真空で使用する場合は外部パイロットにする必要があるのです。
パイロットエアを入れる
ここまでの説明で分かると思いますが、バルブを切り替えるための補助的なエアを供給することを「パイロットエアを入れる」と表現します。
前述の外部パイロットや、エアオペレイトバルブなどを使用する際にこの表現を使います。
例えば、
- 外部パイロット用のポートにパイロットエアを供給する
- エアオペレイトバルブにパイロットエアを入れて切り替える
といった具合です。
パイロット式電磁弁
ソレノイドバルブ(電磁弁)は、直動式とパイロット式の2種類があり、これらを区別するときに「パイロット式」と表現します。
直動式は電気の力だけでスプールなどの弁体を動作させるものです。応答性に優れ、一次側と二次側の差圧がなくても動作できるメリットがありますが、ソレノイドが大きくなり消費電力も高くなるデメリットがあります。
パイロット式は、エアの力を補助的に利用して弁体を動作させるため、電気の力を少なくできます。ソレノイドを小さく、消費電力も抑えられて効率的にバルブを切り替えられます。
パイロットエアを供給するメリットとデメリット
ここまでに何度も触れていますが、大事なことなので改めて説明します。
パイロット式は直動式に比べて下記のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
- 大流量のメインエアを流せる
- サイズを小さくできる
- 消費電力を抑えられる
- コストを安くできる
デメリット
- 応答性が遅くなる
- 一次側と二次側の差圧が必要(一次側 > 二次側)
※内部パイロットの場合のみ
つまりは、応答性が求められる場面や差圧が設けられない場面以外では、パイロット式の方がメリットが大きいのです。
シリンダ駆動用のバルブはほぼパイロット式が使用され、タクトの早い吸着搬送の工程などでは真空用バルブとして直動式が使用されることが多いです。
まとめ
おさらいになりますが、パイロットエアはバルブを切り替えるための補助的なエアのことです。
大流量のエアを流すなら、サイズを小さく消費電力も抑えられるパイロット式のバルブが適しています。
このようにパイロットエアは空圧機器には欠かせない役割を持っていますので、ぜひ認識しておきたい用語です。