なぜ圧縮空気に水が発生するのか?その理由と対策を解説
設置環境等や時期によって、エアシリンダやエアブローノズルなど空気圧機器から水が発生してしまうことがあります。
エアシリンダに水が入ると内部グリースが流され早期にパッキンが摩耗し故障につながりますし、エアブローから水が出てきては対象物に悪影響を及ぼす可能性があるため、できる限り水の発生は防ぎたいところです。
本記事では、空気圧機器に意図せず水が発生してしまう原因とその対策について解説していきます。
エア質が悪い
圧縮空気の中には水分が含まれており、これをできるだけ除去しておかないと、空気温度が低くなった際などに水(液体)として発生してしまいます。
空気は温度が高いほど多くの気体状態の水分を含むことができ、その状態で空気温度が低くなると、気体状態を保てない水分が水として液体化してしまうのです。冬に窓際が結露するのと同じ現象です。
対策1.コンプレッサ室の状態を改善する
コンプレッサ室のメインラインでは水分対策が適切な状態か確認する必要があります。メインラインでは以下のことに注意しましょう。
- アフタクーラがついているか
- メインラインフィルタのメンテ状態
- エアドライヤが正常に稼働しているか
アフタクーラがついているか
コンプレッサで作られた圧縮空気は温度が高く多くの水分が含まれているため、圧縮空気をアフタクーラと呼ばれる装置で冷却して水を除去します。アフタクーラの機能はコンプレッサに備わっていることが多いですが、念の為コンプレッサの仕様を確認してみましょう。
メインラインフィルタのメンテ状態
メインラインに使用されるエアフィルタのエレメントが目詰まりしていないか、カップ内の水(ドレン)が定期的に抜かれているか、メンテナンスの状態を確認しましょう。目詰まりしている場合はエレメントの交換を実施してください。
エアドライヤが正常に稼働しているか
エアドライヤは圧縮空気を乾燥させるために最も重要な装置です。エアドライヤが正常に稼働していないと末端に水が発生してしまいます。冷凍式ドライヤの場合、有資格者による定期メンテナンスが義務付けられているので前回のメンテナンス時期がいつだったか確認するようにしましょう。特に夏の猛暑日にはトラブルが発生することが多いので注意が必要です。
対策2.末端エアの清浄化機器を見直す
コンプレッサ室の状態が万全でも、末端装置に行き着くまでの配管において、大きな温度変化や水抜きが不十分な箇所があると結局水が発生してしまいます。装置にもエアフィルタが設置されていることがほとんどですが、水が発生する場合は次のことを確認してみましょう。
- エアフィルタのカップ内の水抜き
- ドレンセパレータの設置
- 末端用ドライヤの設置
エアフィルタのカップ内の水抜き
エアフィルタのカップに溜まる水(ドレン)は定期的に抜く必要がありますが結構放置されがちです。水が溜まりきった状態ではニ次側に水分が流出してしまいますので、確実に水抜きのメンテナンスは実施するようにしましょう。
ドレンセパレータの設置
エアフィルタには圧縮空気内の水を分離除去する機能がありますが、水の量が多いと除去しきれないことがあります。その時はドレンセパレータ(ウォーターセパレータ)をエアフィルタの前段に設置しましょう。ドレンセパレータは水取り機能に特化した製品で、これをつけることにより水のトラブル回避に加え、エアフィルタの寿命を延ばすことにもつながります。
末端用ドライヤの設置
エアフィルタやドレンセパレータはあくまで圧縮空気内で液体となった水を除去するものであり、気化した水分は除去できません。塗装工程でのエアブローなど圧縮空気の湿気が悪さをするような場面では、末端エア用のエアドライヤを設置しましょう。高分子膜式のエアドライヤが小型で設置も簡単なため末端エアには適しています。
断熱膨張
小型サイズのエアシリンダやエアチャックの使用時に多く見られる現象です。圧縮空気は圧力の変化によって温度も大きく変化します。この変化が繰り返されることによって配管内に水が発生してしまいます。この現象を断熱膨張と呼びます。
エアシリンダの駆動は圧縮空気の圧力変化が伴いますので必ず断熱膨張が生じますが、通常エアシリンダに使用される圧縮空気は電磁弁から大気に排出されるため配管内に水が溜まってしまうことはあまりありません。
しかしエアシリンダの内部容積が、エアシリンダと電磁弁の間の配管の内部容積より小さい場合、配管内エアの大気解放が不十分となり水が徐々に溜まっていってしまうのです。そのため、特に小型のエアシリンダ(エアチャック)から水が発生してしまう現象がよく見られるのです。
対策1.エアチューブを細くする
配管内の内部容積を小さくするため、より細いエアチューブを使用することで断熱膨張による水発生を防ぐことができます。しかし、配管を細くするとエアシリンダの動作速度が遅くなるので注意が必要です。
対策2.急速排気弁をシリンダにつける
急速排気弁とは、圧縮空気の流れる方向によりそのまま二次側へ流すか、もしくはその場で大気に排気するかが切り替わる機器です。通常はエアシリンダが電磁弁との距離が長くて動作速度が速くならない際に設置し、高速化を図るために使用されるものです。
急速排気弁を使用するとエアシリンダと電磁弁の間の配管距離が長くても、エアシリンダに近い箇所で大気に圧縮空気を排出できるので、断熱膨張により発生する水が配管内に溜まりません。
エアシリンダの動作速度が速くなりすぎて困る場合は急速排気弁とスピードコントローラを併設するようにしましょう。
直接水がかかる
エアシリンダに水が直接かかるような環境でも注意が必要です。水がロッドの隙間から内部に侵入することで故障につながったり、エアシリンダに使われている材質自体が腐食して悪影響を及ぼしたりしてしまいます。
対策1.スクレーパー付のエアシリンダに変える
水がエアシリンダ内部に侵入するのは主にロッド隙間部分からとなります。ここにスクレーパーと呼ばれる部品を設置することで水が内部に侵入することを防ぐことができます。
対策2.オールステンレスのエアシリンダに変える
エアシリンダに水が直接かかると、鉄材はもちろんアルミ材も腐食してしまう可能性が高くなってしまいます。シリンダチューブ、ロッド、ボルトに至るまで、耐食性の強いステンレス材に変更したエアシリンダを使用することが望ましいです。
まとめ
本記事では、エアシリンダやエアブローノズルなどの空気圧機器から水が発生する原因と、それによる機器の故障や悪影響を防ぐための対策を詳しく解説しました。
湿度の高い時期や温度変化が激しい環境では特に注意が必要です。コンプレッサ室の状態改善、末端エアの清浄化、断熱膨張対策、直接水がかかる問題への対処として、適切な設備とメンテナンスの重要性を認識するようにしましょう。
これらの対策を適切に実施することで、空気圧機器の寿命を延ばし、安定した性能を維持することが可能です。