エアシリンダの固着現象の原因と対策とは
エアシリンダを長時間放置した後に動作させようとすると、動き出しが悪かったり、急に飛び出し動作をしたり、全く動かなかったりすることがあります。
これは、エアシリンダのパッキンが固着現象を起こしている可能性があります。1度動作させた後、2度目からは正常動作に戻るのが特徴です。
本記事では、エアシリンダの固着現象について、その原因と対策を説明します。
エアシリンダが固着現象を起こす原因
エアシリンダの摺動部にはエア漏れ防止のためにパッキンが使用されており、固着現象はこのパッキンとそれに塗布されるグリスが大きく影響します。
固着現象の主な原因を次に2つ挙げます。
長時間放置でパッキンとグリスの状態が変化する
パッキンとグリスは動作させている時と、長時間放置した後とでは状態が大きく変化します。
長時間放置させると動摩擦力が上昇し、より高い圧力をかけないと動作しなくなります。よく土日に装置稼働を止めた後、月曜日の朝に起こる現象です。
動摩擦力は放置したあと数十分でも上昇し、大体2日ほどで飽和します。一回動作させると動摩擦力は低下し、また放置させない限りは動きやすくなります。
パッキンとグリスが劣化する
パッキンとグリスは使用していなくても数ヶ月、数年と経過すると劣化するため、固着現象がより起こりやすくなります。
パッキンはずっと使用していないと徐々に固くなり、グリスは油分がなくなり潤滑性を失い、摩擦抵抗が増えます。
そのため、シリンダの予備品を長年持っていると、例え未使用品であったとしても交換したらすぐに故障してしまったり、動きづらかったりします。
エアシリンダの固着現象を解消する方法
エアシリンダの固着現象を解消する方法は固着の原因によって異なり、また、恒久的な対策をしたいかどうかによっても異なります。
装置稼働前にならし運転をする
2日ほど放置した後の固着、いわゆる月曜病が発生している場合は、まず通常運転の前にならし運転を実施しましょう。
2〜3回シリンダを往復運動させれば、パッキンやグリスの状態が変化し動摩擦力が低下し、スムーズに動きやすくなります。
ただし放置後1回目の動作時は、動き出しまでに必要なエア圧力は高くなります。動き出すと固着が一気に解放されてシリンダに飛び出し現象が起きますので事故とならないよう注意してください。
低摩擦や微速タイプのシリンダに変える
ならし運転ができない場合や、長時間放置するケースが多い場合は、シリンダを低摩擦タイプや微速タイプに変更してみましょう。
これらのタイプは摩擦抵抗が少なく、長時間放置後であっても低圧エアでスムーズに動き出します。
当然ですが標準品より価格も納期もかかりますので、必要な箇所のみ選別しての採用が良いでしょう。
パッキンの材質を変更する
シリンダを低摩擦や微速タイプの新品を購入したくない場合は、現状より柔らかい材質のパッキンへの変更を検討してみましょう。
摩擦抵抗が減少し、固着現象が起こりづらくなります。ただし、メーカーの保証がなくなることを認識した上で実施してください。
劣化したパッキンとグリスを新しくする
購入後、使用せずに3年以上経っている場合にはパッキンとグリスが劣化している可能性があります。
その場合にはパッキンとグリスを新しく交換しましょう。シリンダのタイプによっては分解不可のものもありますので注意してください。
まとめ
シリンダを長時間放置後に動かなくなる、動きが悪くなる現象が出た場合は固着を疑ってみてください。
シリンダの固着現象はどのメーカーのどの機種であっても発生しうる現象ですので、決して不良品ではありません。
本記事では対策を4つ挙げましたが、使用用途や条件によって適切な対策をするようにしましょう。