エアシリンダをゆっくり低速で動作させる方法
標準のエアシリンダをゆっくり動作させようとすると、摺動抵抗が邪魔をしてビビるような不安定な動きになってしまいます。
ゆっくりと低速動作させたい場合は、SMCの低速シリンダやCKDの微速シリンダなどのオプション品を選ぶ必要があります。
選定の基準としては、使用ピストン速度の最小値が小さいことが大前提ですが、最低使用圧力が小さいことも重要です。
本記事では、エアシリンダをゆっくり低速で動作させたい時に選ぶ機種について説明していきます。
【SMC】低速シリンダC※Xシリーズ
SMC製の低速シリンダC※Xシリーズは、摺動部であるボディとパッキンに表面処理を施しており、摩擦抵抗を低減させています。
この表面処理により使用ピストン速度は0.5mm/s〜と、1mm/sを下回る低速動作を実現しています。
最低使用圧力は機種やサイズにより異なりますが、低いもので0.01MPaからのスペックとなっています。
【CKD】微速シリンダFタイプ
CKD製の微速シリンダは各機種のオプションFを選ぶことで対応できます。SSD2-F、SCM-Fといった具合です。
微速シリンダはSMCと同様にボディとパッキンに表面処理を施しており、使用ピストン速度は1mm/s〜となっています。
最低使用圧力も0.05MPa〜と、いずれもカタログスペック上はSMCに劣る数値です。
【Airpot】エアーペルシリーズ
一つ変わり種ですが、とても優れた製品なので紹介です。アメリカのメーカーAirpot社のエアーペルシリーズです。
ボディはガラス製、ピストンはカーボングラファイト製という摺動部の組み合わせでスルスルと滑るような動きを実現しています。
使用ピストン速度はカタログスペックでは0.5mm/s〜とSMCと同等ですが、最低使用圧力が0.0015MPa〜と相当弱い力でも動作を始めます。
日本国内ではHKSジャパンが代理店となっておりますが、CKDとも協業しているためCKD経由で購入することも可能です。
【補足1】スピコンはメーターアウトを直付けで
シリンダをゆっくり動かす時は動作が不安定になりがちです。シリンダにはスピコンも適切なものを組み付ける必要があります。
シリンダは排気側を絞って速度調整した方が動作が安定する特徴があります。排気側を絞るにはメーターアウトのスピコンを使用します。
また、スピコンの設置位置はシリンダに近ければ近いほど良いです。逆に距離が遠くなると調整が効きづらくなりますのでご注意ください。
スピコンはメーターアウトのシリンダ直付けタイプを使用するようにしましょう。
【補足2】低速域の速度安定を求めるなら電動化も視野に
低速域で安定させるというのは本来エアシリンダには苦手な仕事です。予算にに余裕があるのであれば電動アクチュエータの使用も視野に入れましょう。
電動アクチュエータであればリードの短いボールネジを使用すれば低速域の動きも問題ありませんし、何より再現性が高く安定します。
エアシリンダではどうしても圧力の変動やエア漏れの具合、摺動部の状態変化など、動作や速度に影響する要因が多いので、安定性には欠けるのが実情です。
まとめ
エアシリンダを低速で動作させる時、動きを滑らかにするのは意外と難しいものです。そんな時に今回紹介した低速・微速シリンダは活躍します。
ロールtoロールのテンションコントロールや、高精度の推し圧コントロールの用途など、他のあらゆる場面でも力を発揮する機種です。
是非、各メーカーの機種情報は掴んでおきましょう。特にエアーペルは国内主要メーカーの機種で用途を満たさなかった時、選択肢として持っておくといざと言うときに役に立ちます。