工場の省エネ対策:空気圧システムの電力消費を削減する方法
近年、エネルギー消費の削減が工場経営において重要な課題となっています。カーボンニュートラルへの取り組みとして力を入れている企業も年々増えてきています。
特に、空気圧システムは多くの工場で使用されており、電力消費が大きいため省エネ対策が求められています。電気を使用する空気圧機器だけでなく、エア消費量もコンプレッサの稼働率に関わるため、電力消費に大きく影響します。
本記事では、空気圧システムの電力消費を削減する方法について、いくつかの事例を解説します。この事例を参考にしていただき、工場内の省エネ化活動にお役立てください。
消費電力の少ない機器を選ぶ
省エネ対策の第一歩は、消費電力の少ない機器を選ぶことです。エネルギー効率の良い機器は、同じ作業を行っても消費電力が少なく、運用コストを抑えることができます。
例えば同じ能力を持つ電磁弁であっても、メーカーや機種によって消費電力に違いが出るケースがあります。単純なイニシャルコストだけでなく、仕様を確認して消費電力の差も考慮するようにしましょう。
電磁弁の他、コンプレッサ、エアドライヤ、センサ類など電気を使用する機器については消費電力にも注意して選定するようにしましょう。
エア消費量の少ない機器を選ぶ
消費電力と同様に、同じ能力を持つ機器でもメーカーは機種によってエア消費量に差がある場合があります。精密レギュレータ、膜式ドライヤ、真空エジェクタなど、エア消費をする機器についてはその量についても選定時に確認するようにしましょう。
また、異物の吹き飛ばしや冷却用途などでのエアブロー工程では、多量の圧縮エアを消費します。装置のエア消費の大部分がエアブローだと言っても過言ではありません。このような箇所では省エネ用のエアブローノズルやパルスブローバルブの設置を検討しましょう。
エアブローノズルは周辺の大気を巻き込みながらエアを放出するため、少量のエアで大きな効果を得ることができます。パルスブローバルブは間欠動作でON/OFFを繰り返すため、エアの消費量を削減することができます。
エア漏れの少ない機器を選ぶ
空気圧システムのエア漏れは、電力消費の無駄を生む大きな要因の一つです。エア漏れがあると、圧縮空気を作るためのコンプレッサの稼働率が上がり、結果的に電力消費が増加します。エア漏れの少ない機器を選ぶことで、電力消費の削減が期待できます。
エア漏れの少ない機器を選ぶ際のポイントは、接続部やシール部の品質が高いことです。市場にはエア漏れの少ない長寿命を売りとしたエアシリンダや電磁弁があり、そのような機器は長期的にエア漏れを少な異状態に保てる特徴があります。しかし、メタルシールの電磁弁などは、長寿命ですがエア漏れを始めから許容している製品のため、省エネには不向きなので注意してください。
また、定期的なメンテナンスによってエア漏れの発生を未然に防ぐことも重要です。機器の選定時には、メンテナンス性も考慮して選ぶことが望ましいです。
エア流量を管理しエア漏れの増加を早期に発見する
空気圧システムのエア流量を管理することで、エア漏れの増加を早期に発見し、修理や交換を行うことができます。エア用の流量センサなどを設置し、エア流量の変化を管理するようにしましょう。
エア流量の異常が検出された場合は、直ちに原因を調査し、対策を講じることが重要です。エア漏れの原因は、機器の劣化や接続部の緩みなど様々ですが、早期に対策を行うことで、電力消費の増加を抑えることができます。
電動アクチュエータに置き換える
空気圧シリンダを電動アクチュエータに置き換えることで、省エネ効果が期待できます。電動アクチュエータは、空気圧アクチュエータに比べて動作時のエネルギー消費が少ないため、電力消費を削減することができます。
ただし、電動アクチュエータは停止時も待機電力が発生するのに対し、空気圧シリンダは停止時は電力もエア消費もありません(エア漏れがないことが前提)。動作頻度が低い場合は安易に電動が良いわけではないので注意してください。
また、電動アクチュエータへの置き換えは、初期投資が必要となります。そのため、コスト面を考慮し、適切なタイミングでの置き換えを検討するようにしましょう。
まとめ
工場の省エネ対策として、空気圧システムの電力消費を削減する方法は非常に重要です。本記事で紹介した方法は、消費電力の少ない機器を選ぶ、エア消費量の少ない機器を選ぶ、エア漏れの少ない機器を選ぶ、エア流量を管理しエア漏れの増加を早期に発見する、電動アクチュエータに置き換える、といったものです。
これらの方法を適切に取り入れることで、空気圧システムの電力消費を削減し、省エネルギーに貢献することができます。工場経営者や運用担当者は、ぜひこれらの方法を参考にしていただき、自社の状況に応じた省エネ対策を検討していきましょう。